四角いパレット

katataka's blog

ドアノブ

車を走らせ、
久しぶりに、もとかのの家に行きました。
家の前を通りながら、なんだかすごく久しぶりな気がして、当時の日々が頭の中を駆け巡りました。
窓のカーテン越しに明かりが見えました。
私は気づかれないように、音を立てずに袋をドアのノブにかけようとしました。
と、そのとき私は、ドアの向こうから、
低い男性の声がするのに気づきました。
すげえな。筒抜けだ。
私がこの家に滞在していたときも、声が外へ筒抜けだったのでしょうか。
ふと、私は少し考えて、またドアノブからそっと袋を外すと、
袋の中に入れていた手紙を抜き取り、またそっとドアノブに袋をかけなおしました。
…これでいいのだ。
もう、いまさら、私から何も伝えることなんてないんです。
なに心情に浸ってこの期に及んで手紙なんぞ忍ばせている。馬鹿げているではないか、私。

手紙といっても、
別れた1時間後くらいに書いた手紙です。
そのときの気持ちを忘れないように、つづっておいたんだけれど。
当時の綴った気持ちと、今とでは、違うようでいて、変わらないままのようでいて、
でもまわりの風景や状況や出来事は日々移ろいでいて、
時は確実に数を重ねていて、それと比例してまた気持ちも変化しているはずで。
変化はお互いの身に起こること。
手紙は過去。目の前にしているのが今。
さようなら。
私の居ない、すてきな人生を。