2009年の映画「Dear Doctor」をDVDでみました。
予想していたのとストーリーは同じなんだけれど、雰囲気というかは少し違う感じでした。
変に美化しないことで、逆にすんなり心に入ってきたというか。
予想以上に、おもしろかったです。
以前、「ヤブ医者になれ」っていう話を聞いたことがあります。
一番理想的な医者像は、信頼されるように頑張るヤブ医者だと。
懸命に、勉強して、患者に向かい合う。
本当、医者なんて誰にでも出来るものだと思います。
資格の有無なんて、関係ないんじゃないかと。
勉強していけば、資格がなくたって、医者と同じこと、いやそれ以上のことができるようになる気がします。
だからねぇ、別にいいんじゃないか。ヤブ医者が医者やっても。
所詮、医者なんて考えてみれば大した難しいことしてないんだし。
知識さえあれば、たとえ看護師でも、素人でも、可能ではあるんだから。
ただ医者がほかと違うのは、責任を負っているってことだと思います。
その患者(と家族)に対して責任さえ負えれば、医者の行為は出来うるのではないかと思うのです。
まあ、極論ですが。
*
映画のなかでは、知っている内視鏡の教科書や研修医本などが垣間見れて楽しかったです。
そして医療的なつじつまとか内容とかも、他のテレビドラマとかと比較すると現実に即していてよかったです。
*
この映画をみながら思い出したのは、
学生のとき地域医療実習でお世話になった常陸太田市・大子町。
この映画でも撮影に使われていたようです。
オオモリ医院では、大変お世話になりました。
たった2週間(と3日間)でしたが、
意外と今でもその光景が(多少美化された状態で)心に焼き付いています。
全国でも有数の医療過疎地域。高齢者が半数以上。近くの二次医療機関は車で1時間以上。
そんななかで、金にもならないのに往診行ったり、
往診中の車の中で看護師さんが「あそこの誰々はお子さんが家を出て見る人がいない」「あそこの庭先の花は毎朝奥さんが手入れしている」とか、
集落のうわさ話の延長とも思えるような医療的情報を教えてくれたり、
映画で描かれた情景が、そこにはありました。
もちろん、そこでの悩みとか問題とか悪口みたいなのとかもちらほら聞きましたが、
とにかく、そういった現実が、日本の各所にあるんだなあと、
当時学生だった私は考えさせられたものです。
*
実際、映画のエイタが医者3年目にしてそんな診療所に勤めることなんてけっこう無茶に近い話です。
初期研修が終わったばかりの3年目の医者は、ピンキリではありますが、
一つの集落の医療を支える幅広い(あるいは地域医療に要点をしぼった)知識と、技量と、度量(大事)をもつ医者はそうそういるものではありません。
そして、数年〜十数年して、これらの能力がある程度身に付いたとしても、
それで医療過疎地域に好んで行こうとする医者はあまりいません。
それは医療というものが人間性を求められる一方で、常に最新の知識と技術(それもinternetやモノでは伝わらない、手技とかいったもの)を必要とする側面もあるからです。
そんな医療の特性から、常に他の医者同士つながっていないと、医者をすることができません。
ひとりぼっちの医者は、知識も手技もupdateされず経験も共有できないダメ医者です。
人間関係が広くていろんな医者といつも連絡を取り合っているような医者は、知識も手技も常に身に付いていくデキル医者です。
極論だけどw。
だから、たとえ医療に志ある医者も、遠い地域には行きたくない。
散在が求められている一方で、集約しないと手技は得られない矛盾。